やきう民
引用元: ・(´・ω・`)「きうりおいしいね」彡(゚)(゚)「せやな」

1: 名無しさん 22/03/06 11:47:24 ID:XpnX
彡(゚)(゚)「……」ポリポリ
(´・ω・`)「……」ポリポリ
彡(^)(^)「くぅ~たまらん!この塩気が最高や!」
(´・ω・`)「常夏の海を眺めながらのきうり 最高だね」
彡(゚)(゚)「あぁ。たかがきうりでこんなにも幸せを感じられるなんてな」
(´・ω・`)「僕たちは地獄を体験したからね。あの日からもう20年だ」

2: 名無しさん 22/03/06 11:47:43 ID:XpnX
ーーかつて始まった戦争は泥沼の長期化に陥り、2025年、ついには核兵器の使用という最悪の結末を迎えた。
核の応酬――それは戦争当事国のみならず地球全体へ深刻な被害をもたらした。
人類の、人類による人類のための崩壊。ありったけの文明と生命を破壊し、全てを灰塵に帰したのだ。

~20年前

彡(゚)(゚);「大変や原住民!核ミサイルが発射されたらしいで!」
(´;ω;`)「聞いたよお兄ちゃん!これから世界中で核保有国の反撃が起きるって……核戦争が始まるって……」
彡(゚)(゚);「泣いてる場合ちゃうで!早く避難するんや。地下シェルターに逃げるんや!」
(´;ω;`)「そうだねお兄ちゃん。政府が作ったシェルターへ急ごう」

3: 名無しさん 22/03/06 11:48:01 ID:XpnX
(´・ω・`)「で、でも待ってよ。シェルターに避難したらどうなるの?」

彡(゚)(゚)「どうって……戦争が落ち着くまで待つしかないやろ」

(´・ω・`)「この戦争は3年も続いているんだよ?もし物資や食料が尽きても戦争が終わらなかったら……」

彡(゚)(゚);「サバイバル生活しかないやんけ!その時になって慌てても手遅れや。今の内に準備しなきゃ」

4: 名無しさん 22/03/06 11:48:17 ID:XpnX
(´・ω・`)「お兄ちゃん、どうする?地下シェルターは今すぐ使えて環境もいいけど、備え付けのものしか使えない」

彡(゚)(゚)「改造ができへんのは不利やな。他の選択肢はないんか?」

(´・ω・`)「最初からサバイバルするのはどうだろう。自分達で穴を掘って地下に避難し、自給自足の生活をするんだ。環境は悪いけど可能性は無限大にあるよ」

彡(゚)(゚)「よし、そうするで!自分達で生き残るんや!」

(´・ω・`)「じゃあまず安全な所を探そう。近所の山にほら穴があったはずだ」

5: 名無しさん 22/03/06 11:48:35 ID:XpnX
彡(゚)(゚)「山に来たで。昔はよくこの辺りで遊んだわ。神様のほこらだから穴には入るなって言われてたなぁ」

(´・ω・`)「じゃ、入るよ」スタスタ

彡(゚)(゚)「懐中電灯一つで洞窟探検か。もし核戦争じゃなきゃ子供に戻ったようなワクワク感やったのに……ん?奥に着いたら扉があるやん」

(´・ω・`)「よっこらしょ」ガコン

6: 名無しさん 22/03/06 11:48:55 ID:XpnX
彡(゚)(゚)「ファッ?!何やこの部屋!岩を削って作った……倉庫?」

(´・ω・`)「倉庫と呼ぶにはあまりにも原始的だけどね。大昔、地域の人達がお祭りや催しの倉庫にしていたらしい。今は誰も出入りしていないよ」

彡(゚)(゚)「ええ感じやん。人一人立てる高さはあるし、広さも16畳くらいありそうや。ここならとりあえずは生活できそうやで」
※(地震とかあるので安全じゃ)ないです

(´・ω・`)「じゃ、ここが拠点でいい?」

彡(゚)(゚)「勿論や!」

7: 名無しさん 22/03/06 11:49:17 ID:XpnX
(´・ω・`)「決まりだね。急いで生活物資を集めよう。生きていく上で絶対に必要なのは水と塩と食料だ」

彡(゚)(゚)「せやな。この岩の部屋に食べられるものはない。外でに食べ物を探せるとも限らん。自給自足が一番やな」

(´・ω・`)「そうだね。まずは外から持ち込んで環境を作るんだ」

9: 名無しさん 22/03/06 11:49:34 ID:XpnX
彡(゚)(゚)「水は?」

(´・ω・`)「地下水を頼ろう。この辺りには水脈があると聞いたことがあるんだ。頑張って掘り当てるしかないよ」
※放射能で地下水も普通に汚染されるのでNG

彡(゚)(゚)「塩はどうする?」

(´・ω・`)「海水があれば。昔ながらの製塩法で保存もできるよ。幸いこの山の裏は海に繋がっている。そこまでトンネルを掘ろう」

彡(゚)(゚)「大変な工事やな……食べ物は?海で魚釣るんか」

10: 名無しさん 22/03/06 11:50:00 ID:XpnX
(´・ω・`)「それもあるけど、家畜を持ち込んで飼育したり、野菜とかも自家栽培しよう」

彡(゚)(゚)「野菜?日光なしで育つんか?」

(´・ω・`)「ううん。日光の変わりが必要だ。最近は植物を育成するLEDライトとかあるし、パーツさえあればDIYもできるよ」

彡(゚)(゚)「電気が必要やな。しばらくはその辺の電柱から盗電できると思うが、最終的には自家発電が必要や。海に辿り着けば波力発電ができるよな?」

(´・ω・`)「いい考えだね。この山は日当たりもいいし太陽光発電ができるかも」
※素人が設置できる訳ないだろ!いい加減にしろ!

11: 名無しさん 22/03/06 11:50:19 ID:XpnX
(´・ω・`)「お兄ちゃん、確か建築関係の仕事をしていたよね?」

彡(゚)(゚)「あぁ。土木の知識には自信あるで。掘削、配線、排水、太陽光パネル、何でも出来るわ。かっぱらっても許してもらえるやろ」

(´・ω・`)「じゃあお願いしていいかな?僕は食料関係を調達するよ。うちは酪農をやっているし、農業を学んだこともあるんだ」

彡(゚)(゚)「頼もしいな。任せるで」

彡(゚)(゚)「二人で核戦争から生き残るんや!」

12: 名無しさん 22/03/06 11:50:36 ID:XpnX
~数日後

ガガガ

(´・ω・`)「改造したドリラーでトンネルを掘っているよ。横穴を空けるのも大変だ」

彡(゚)(゚)「電気がある内に進めなあかんわ。なくなったらツルハシで穴掘りやで」

(´・ω・`)「そうだね。……ん?お兄ちゃん、地面が少し湿ってきたよ」

彡(゚)(゚)「これは……もしかして……」

ガガガ…

彡(^)(^)(´^ω^`)『やったー!水脈発見!』

13: 名無しさん 22/03/06 11:50:43 ID:kCj7
ほう

14: 名無しさん 22/03/06 11:50:57 ID:XpnX
~数日後

彡(゚)(゚)「なんか大麻育ててるみたいな色やな、この植物育成ライト……」

(´・ω・`)「これでもれっきとした育成キットだよ。使うのはまだ先だけど、日光のない地下栽培ではこれが頼りだからね」

彡(゚)(゚)「まぁ贅沢は言わん。家畜も揃ったみたいやな。これで足りるんか?」

(´・ω・`)「うん。二人分なら生活できると思う。食べちゃ駄目だよ」

彡(゚)(゚)「分かっとるわ。しかしこいつらと同じ部屋で寝るんか?」

(´・ω・`)「しょうがないよ。海へトンネルが通ったら部屋を拡げてあげよう」

15: 名無しさん 22/03/06 11:51:26 ID:XpnX
~数日後

彡(-)(-)「うう……ずっと穴掘りっぱなしで体調が優れんわ。身体中が痛い」

(´・ω・`)「お兄ちゃん無理しないで。昼も夜も休みなしじゃ疲れて当然だよ」

彡(゚)(゚)「原住民も同じやないか。朝から晩まで家畜の面倒見て夜は食料探し、穴掘りまで手伝ってくれるやん。いつ寝てるんや?」

(´・ω・`)「僕は平気。さ、少し休んできなよ。続きは僕がやるから」

彡(-)(-)「すまん、1時間だけ仮眠するわ……」

(´・ω・`)「……」

16: 名無しさん 22/03/06 11:51:34 ID:XpnX
彡(゚)(゚)「原住民によると町の人は少なくなり、治安も悪くなっているらしい。入手できる物資も限られているそうや。山から見下ろす光景も世紀末になってきた。ちきうは終わってしまうんかな……」ウトウト

17: 名無しさん 22/03/06 11:52:00 ID:XpnX
コケコッコー!

彡(゚)(゚)「ファッ?!朝?!8時間も寝てしまったやんけ!原住民も起こさんのかい!」

彡(゚)(゚)「おかしい。トンネルがやけに長くなっている……おーい」

彡(゚)(゚)「あ、いた!原住民!すまんすま……ファッ?!」

(´・ω・`)「お兄ちゃん。見てよ、海に辿り着いたよ」

彡(゚)(゚)「ここは……海岸?!一晩でこんなに掘ったんか?!」

(´・ω・`)「岸壁の間に囲まれた幅・奥行き5メートルほどの小さな砂浜に運よく出られたんだ。あぁ、いい景色だね」

彡(゚)(゚);「お前何者なんや……」

18: 名無しさん 22/03/06 11:52:21 ID:XpnX
~数週間後

ガガ…ザーー…

彡(゚)(゚)「地下生活を始めてしばらく経った。原住民、最後のラジオ局がとうとう停波したで」

(´・ω・`)「うん。マスコミがなくなり情報が途絶えてしまったね。世の中のことが分からず、急に視野が狭くなった気分だ」

彡(゚)(゚)「不安もいっぱいや。避難生活ってこんな気持ちになるんやな。これからどうなるんやろ…」

19: 名無しさん 22/03/06 11:52:49 ID:XpnX
~数週間後

彡(゚)(゚)「自家栽培と自家発電の環境も徐々に整い、何とか自給自足の生活ができるようになったな」

(´・ω・`)「しかし人類の文明はどんどん失われている。自分達で生き残る時代に戻ったんだ。僕とお兄ちゃんは運がよかった」

彡(゚)(゚)「町にあるのはごみと瓦礫だけ。インフラは放棄され、ほら穴を出るといつも遠くに火の手が見えた。地下に避難した人々は無事なんやろか」

(´・ω・`)「命知らずのアマチュア無線家がどこからか教えてくれた。核の被害を受けた国は壊滅し、それ以外の国も次々と崩壊しているそうだ。政府も自治体もなく、暴力とカルトが幅を利かせているのはどこも同じらしい」

彡(゚)(゚)「噂によると、気温が例年を大きく上回ったんやと。核兵器を使いまくった結果、地球環境が変動しているんやな」

(´・ω・`)「…終わった、と言っていいのかな。実感がないよ。少しずつ崩壊し、気付いたらここまで来てしまったからね」

彡(゚)(゚)「正常性バイアスってやつや。もう取り返しが付かへん。……戦争の悲惨さはこんなにも重いものやったのか」

20: 名無しさん 22/03/06 11:53:05 ID:XpnX
(´・ω・`)「ついに普通の食料が底を尽き、先週から缶詰と自家栽培だけになった。このまま100%自給自足の生活を目指すよ」

彡(゚)(゚)「最近、持ち込んだガイガーカウンターが反応するようになったな。核戦争による放射能が流れてきたみたいや。人体に影響はない範囲やが、念のため外で漁業するのはやめておくか」

(´・ω・`)「そうだね。出入りは最低限に控えよう。僕もほら穴の近くで栽培していた野菜を地下に移そうと思う。育成キットを使うから電力も節約しなきゃ」

彡(゚)(゚)「いよいよ本格的な地下生活やな。日光のない世界での自給自足、果たして上手くいくかな……」

21: 名無しさん 22/03/06 11:53:24 ID:XpnX
彡(゚)(゚)「地下生活に入ってしばらく経った。原住民のお陰で食料は問題なし。ワイも勉強しながら手作業で部屋を拡張・増築しているで」

(´・ω・`)「お兄ちゃん、今日の作業は終わりの時間だよ」

彡(゚)(゚)「何や、もうちょっと行けるで?」

(´・ω・`)「一日に消費するエネルギーが補給可能量を超えちゃうよ。この生活は身体が資本だ。無理せず休もう」

彡(゚)(゚)「……せやな。地下で確保できる食べ物は限られているからな。また明日頑張るわ」

(´・ω・`)「配給と労働時間の管理なんて、僕らもすっかりアカい暮らしになったね」

彡(゚)(゚)「この地下には財産も捨てるものもあらへんからな。お互いを助けることが生きる最善策なんや」

22: 名無しさん 22/03/06 11:53:47 ID:XpnX
彡(゚)(゚)(´・ω・`)『いただきます』

(´・ω・`)「いつも似たような食事でごめんね」

彡(゚)(゚)「何言うてるんや。飯があるのはお前のお陰やで。パン、芋、卵、牛乳、きのこと少しの野菜、若干の保存食」

(´・ω・`)「味付けは塩と食べ物への感謝の気持ち。原始的な生活だ」

彡(゚)(゚)「空腹と寒さを凌げるなんて贅沢や。強いて言うなら外に出たいけどな」

(´・ω・`)「そうだね。薄暗いランプだけじゃ気持ちも上がらないよ」

彡(゚)(゚)「いつかは地上に戻れるかなぁ」

23: 名無しさん 22/03/06 11:54:09 ID:XpnX
彡(゚)(゚)「地下の生活は過酷な環境やったが、生き残りたいという強い意志は絶えへん。少しでもよくしたいと思う気持ちが働く原動力や」

(´・ω・`)「耐えるためには共生・共存が絶対。家畜も同じ水を飲んだ友達だ。せっかく部屋を分けたのに、みんな寄り添って眠ることも多かった」

彡(゚)(゚)「とにかく元の生活に戻れると信じて――ほら穴を出る日を待ち続けた」

24: 名無しさん 22/03/06 11:54:30 ID:XpnX


彡(゚)(゚)「あ、原住民。時計が止まってるで。電池切れたんちゃうか?」

(´・ω・`)「本当だ。もう予備の電池はないからこれっきりだね」

彡(゚)(゚)「どうやって時を計るんや。地下生活じゃ昼も夜も分からんで」

(´・ω・`)「……そうだね。そろそろ地上へ出てみようか。放射線量も落ち着いているみたいだし。海岸に行ってみよう」

彡(゚)(゚)「久しぶりの外やな……」

25: 名無しさん 22/03/06 11:54:52 ID:XpnX
ンゴゴゴ ←ドアを開ける音

彡(゚)(゚)「おお、夜か。何時くらいやろ……綺麗な海やなぁ」

(´・ω・`)「恐らく10時、いや11時くらいかな」

彡(゚)(゚)「どうして分かるんや?」

(´・ω・`)「潮の満ち引きや月の位置で大体の時間は判断できるよ。今日は天気がいいから星座も見える……ん?」

彡(゚)(゚)「原住民はそんなこともできるんか。というか昔の人ってすごいな……ワイもやり方教わってええか?」

(´・ω・`)「いいけど、ちょっと待って。おかしい。今って何月だと思う?」

彡(゚)(゚)「うーん……日付なんか覚えてへんわ。暑くも寒くもないから秋の始まりくらいちゃうか?それとも春か?」

26: 名無しさん 22/03/06 11:55:10 ID:XpnX
(´・ω・`)「違うよ。今は12月。真冬だ」

彡(゚)(゚);「ファッ?!めっちゃ過ごしやすいで!」

(´・ω・`)「空を見たら分かったんだ。冬の大三角と呼ばれるシリウス、プロキオン、ベテルギウスが確かに見える……」

彡(゚)(゚);「そ、そんな……冬の夜がこんなに暖かくなるほど地球環境が変わってしまったんか?!」

27: 名無しさん 22/03/06 11:55:25 ID:XpnX
~翌日

彡(゚)(゚)「おはよう原住民。今日は山を下りるで」

(´・ω・`)「うん。世の中はどうなっているのだろう……」スタスタ

28: 名無しさん 22/03/06 11:55:38 ID:XpnX
彡(゚)(゚)「枯れてる……暖かいのに草木が枯れてるやんけ」

(´・ω・`)「恐らく夏の内に枯れたんだ。気候変動による酷暑に耐えられなかったんだろうね」

彡(゚)(゚)「なるほど、冬も暖かいなら夏はもっと暑くなるわな。これも核兵器による環境破壊。生態系絶望やんけ」

(´・ω・`)「この様子だと動物にも致命傷なはずだよ。夏を生き延びた生き物はいるのだろうか……」

29: 名無しさん 22/03/06 11:56:01 ID:XpnX
彡(゚)(゚)「町の近くまでやってきたで」

(´・ω・`)「すっかり荒廃しているね。生き残りがいるとは思えない……いたとしてもろくなのじゃないよ」

彡(゚)(゚)「……」

(´・ω・`)「……」

彡(゚)(゚)「…………」

(´・ω・`)「どうしたの?」

彡(;)(;)「なんか……涙が出てくるんや……」

30: 名無しさん 22/03/06 11:57:29 ID:XpnX
数日後

(´・ω・`)「さぁ、おいでおいで。今日も日光浴だよ」

彡(゚)(゚)「原住民、そのまま家畜の面倒頼むわ。ワイ今日も町に行ってくるから」

(´・ω・`)「うん。気を付けてね」

彡(゚)(゚)「いつまでも落ち込んでちゃいられんわ。自分が生きてることを考えなきゃあかん。生きなきゃあかんのや」

彡(゚)(゚)「町に食べ物はないけど物資はある。ツルハシを直したり衣服を作ったり、動ける冬の間に材料をかき集めて山へ帰るで」

31: 名無しさん 22/03/06 12:00:30 ID:h66N
読み応えある

32: 名無しさん 22/03/06 12:00:53 ID:K3VG
面白い

34: 名無しさん 22/03/06 12:18:14 ID:iCGa
支援

35: 名無しさん 22/03/06 12:25:10 ID:XFTp
支援

36: 名無しさん 22/03/06 12:37:02 ID:bIRN
支援

38: 名無しさん 22/03/06 15:15:09 ID:XpnX
ウロウロ
彡(゚)(゚)「お、状態のよさそうな木材やんけ。よっこいしょ」

彡(゚)(゚)「殺風景やなぁ。廃墟廃墟アンド廃墟。目印もなーんもあらへん。住所が全く分からんわ。ワイの家なんてどこにあったんやろ」

39: 名無しさん 22/03/06 15:15:18 ID:XpnX
???「うーん……」

彡(゚)(゚)「あ、向こうから人が来る……こんちはっす」

(o'ω'n)「どうも」

彡(゚)(゚)「……」スタスタ

(o'ω'n)「……」スタスタ

彡(゚)(゚) (o'ω'n)『ファッ?!生存者?!』

40: 名無しさん 22/03/06 15:15:39 ID:XpnX
彡(゚)(゚)「えっ、生存者のコミュニティがある?!」

(o'ω'n)「そうだおん。内陸の山に生き残りが集まっているおん。まさか他に生存者がいたとは」

彡(゚)(゚)「ワイも知らなかった……。こっちは海側の山のほら穴に避難したんや。もう誰もいないかと思ってたで」

(o'ω'n)「それは運がよかったおん。ウチは飢餓や疫病、悪党の襲撃で大勢が亡くなってしまったおん」

41: 名無しさん 22/03/06 15:16:17 ID:XpnX
彡(゚)(゚)「大変そうやな…。今の生活は大丈夫なんか?」

(o'ω'n)「今はみんな無事だおん。でも困っていることがあるおん……さっき海側に住んでいると言ったおん?」

彡(゚)(゚)「せやで。何や、もしかして塩が必要か?」

(o'ω'n)「大至急」

42: 名無しさん 22/03/06 15:16:32 ID:XpnX
彡(゚)(゚)「……って訳でな原住民!生き残りの人達が塩を必要としているんや!すぐに配達するで!」

(´・ω・`)「それは大変だ。よし、保存していた塩を送ってあげよう。今度は僕が行ってくるよ」

彡(゚)(゚)「よし、頼んだ!」

彡(゚)(゚)「まさかの生存者発見で新展開や。生き残った人達を助けるという使命にワイらは燃えていた」

43: 名無しさん 22/03/06 15:16:49 ID:XpnX
数時間後

彡(゚)(゚)「遅いな原住民……もう日が暮れたで……」ソワソワ

(´・ω・`)「お兄ちゃんただいま。遅くなってごめん」

彡(゚)(゚);「原住民!心配したで!あいつらに騙されたかと思ったわ!」

(´・ω・`)「ごめんごめん。情報交換をしていたらつい熱くなっちゃって。それにほら、塩のお礼の品だよ」

彡(゚)(゚)「これは……お肉?!」

44: 名無しさん 22/03/06 15:17:19 ID:XpnX
ナポ…モニュ…

彡(^)(^)「ンマァーイ!肉なんて何か月ぶりや!ホンマに美味いわ!あいつらええ奴やなぁ……」

(´・ω・`)「向こうは規模が大きくて生産物も多い所なんだ。50人くらいいて住み心地も断然いい。『こっちに来ないか』って言っていたよ」

彡(゚)(゚)「えっ、引っ越してもええんか!」

(´・ω・`)「生存者たちのコミュニティだから大歓迎だってさ。人は多い方が良いって」

彡(゚)(゚)「せやな。あ、でも……」

45: 名無しさん 22/03/06 15:18:16 ID:XpnX
彡(゚)(゚)「あいつら塩が不足しているんやろ?今後も海に繋がるルートが必要なはずや。引っ越すとしてもここを何かに使えないやろか?」

(´・ω・`)「いい考えだね。ここならそのまま製塩施設として使えるよ。でも作業のために往復するのは大変だね。夏は特に」

彡(゚)(゚)「町から離れてるもんな。夏の方が製塩はしやすいんやが……人を置いとく訳にもいかんしな」

(´・ω・`)「塩は必要だ。また穴を掘ろうか」ニッコリ

46: 名無しさん 22/03/06 15:18:45 ID:XpnX
彡(゚)(゚)「翌日、向こうの山の生存者たちと会った。製塩所を作るアイデアを共有し、みんなでトンネルを掘ることになったで」

(´・ω・`)「生存者たちは町の地下水路を通路として利用していた。そこにトンネルを直結するのが一番短い。正確な座標を確認し合い、両方からトンネルを作ることに決まった」

彡(゚)(゚)「急なトンネル掘りで忙しくなったが、なぜだか充足感が湧いてくる。自分たちが文明を作るという感覚のせいかもしれんな」

47: 名無しさん 22/03/06 15:19:16 ID:XpnX
彡(゚)(゚)「~♪」ザックザック

(´・ω・`)「お兄ちゃん、時間だよ。食事をして交代しよう」

彡(゚)(゚)「おう、すまんな。……原住民も大変やろ」

(´・ω・`)「いいんだよ。早く開通させればみんなが助かる。向こうの生存者たちのためにも頑張ろう」

彡(゚)(゚)「せやな。……トンネルは夏までにできるやろか」

彡(゚)(゚)「しかし原住民もよく働くなぁ。ワイより明らかに仕事が早い。休みも睡眠も殆ど取らないなんてどういうこっちゃ?」

48: 名無しさん 22/03/06 15:19:48 ID:XpnX
~2か月後

彡(゚)(゚)「……」ザックザック ドカッ

彡(゚)(゚)「ファッ?!」

(o'ω'n)「ファッ?!」

彡(^)(^)(´^ω^`) (o'ω'n)『やったー!トンネル開通!!』

彡(^)(^)「予定より早く向こうのトンネルと合流できたで!座標もピッタリや!」

(´・ω・`)「すごいねお兄ちゃん。培ってきた土木技術の真骨頂だよ」

彡(^)(^)「何言うてるんや!みんなが力を合わせて掘り進めてくれたお陰やで!」

49: 名無しさん 22/03/06 15:20:14 ID:XpnX
彡(゚)(゚)「この日、めでたく生存者たちと合流。予定より早いトンネル完成により、みんなの塩不足の問題は解決や」

(´・ω・`)「家畜や栽培機材もお引越し。この小さな社会では僕達の『財産』は存在しない。全てが共有物であり、全てが助け合いだ」

彡(゚)(゚)「ささやかな歓迎会で生存者たちのコミュニティに加わり、ワイらの新しい生活が始まった」

彡(゚)(゚)「頑張ってよかったな。今までより規模が大きくなって食料の安定性もアップ。生活にも少し余裕ができた。何だか報われた気分や」

(´・ω・`)「お兄ちゃん、また泣いているよ?」

彡(;)(;)「だって、ほっとしたらつい……」

50: 名無しさん 22/03/06 15:20:35 ID:XpnX
彡(゚)(゚)「その後もワイらは働いた。原住民は食料生産量アップのための肥料開発や品種改良を進め、ワイはエンジニアとして生活環境の改善に取り組んだ」

彡(゚)(゚)「そうしている内に夏が来た。予想通り連日60度以上を記録。外に出るのは夜間の僅かな作業に限定し、ワイらは再び地底での生活を送っていた」

彡(゚)(゚)「そこでワイは不思議な話を聞いた……」

51: 名無しさん 22/03/06 15:20:52 ID:XpnX
彡(゚)(゚)「えっ、おんちゃんも不眠不休?」

(ヽ´ん`)「あぁ。あいつはリーダー的な立場だが、いつもいつも働いているんだ。眠るのなんてせいぜい1時間。休んでいるのは見たことないな」

彡(゚)(゚)「不思議やな……ワイの所にいた原住民も同じなんや。全然寝ないし仕事もクッソ速い」

(ヽ´ん`)「それ、うちもだよ。みんなが寝静まった後も一人で作業しているんだが、俺ら全員よりあいつ一人の方が早いくらいだ」

彡(゚)(゚)「偶然とは思えんな。ちょっと聞いてみるか」

52: 名無しさん 22/03/06 15:21:53 ID:XpnX
彡(゚)(゚)「なぁ、原住民?」

(´・ω・`)「お兄ちゃん。どうしたの?」

彡(゚)(゚)「大したことやないけど……。原住民っていつ寝てるんや?」

(´・ω・`)「え?やだなぁ、普通に寝てるよ」

彡(゚)(゚);「でもずっと働きっぱなしやん。お前がちゃんと寝てる所見たことないんやが」

53: 名無しさん 22/03/06 15:22:15 ID:XpnX
(´・ω・`)「僕ショートスリーパーなんだ。生まれつき睡眠時間が短くてね」

彡(゚)(゚)「で、でも……」

(´・ω・`)「それに体力もあるから休憩も殆ど要らないよ。気にしないで」

彡(゚)(゚);「嘘つけや!たった1時間寝ただけで人の倍以上働けるなんてあり得ないで」

(´・ω・`)「気のせいだよ。お兄ちゃんだってそれくらい働いてるよ」

54: 名無しさん 22/03/06 15:22:34 ID:XpnX
彡(゚)(゚)「……おんちゃんも同じなんや」

(´・ω・`)「!」

彡(゚)(゚)「おんちゃんは生存者たちのコミュニティを最初に作った人で、誰よりも働いて誰よりも休まない。お前と同じや。気のせいなんかやない」

(´・ω・`)「……」

彡(゚)(゚)「原住民、頼む。教えてくれ。お前らは何者なんや?どうしてワイらを助けてくれるんや?」

(´・ω・`)「……」

56: 名無しさん 22/03/06 15:39:56 ID:llkQ
久しぶりに没頭したで。
イッチサンガツ

59: 名無しさん 22/03/06 16:27:42 ID:tsFD
オモロイわ
ひさびさの彡(゚)(゚) SSやから余計に

60: 名無しさん 22/03/06 18:19:31 ID:iCGa
いいね

61: 名無しさん 22/03/06 19:05:33 ID:XpnX
(´・ω・`)「誰にも言わないって約束してくれるかな」

彡(゚)(゚);「えっ、そんな大事な話なんか」

(´・ω・`)「なるべく知ってほしくないことなんだ。言っても信じてもらえない」

彡(゚)(゚)「……わ、分かったわ。絶対に誰にも言わんと約束する。お前は大切な友人で命の恩人や。約束する!」

62: 名無しさん 22/03/06 19:05:47 ID:XpnX
(´・ω・`)「やっぱりお兄ちゃんは優しいね。お兄ちゃんのことを信じてよかったと思うよ」

彡(゚)(゚)「ワイもや。ワイもお前を信じてよかったと思うで。これからもお前を信じ続けるわ」

(´・ω・`)「ありがとう。じゃあ話すね……」

(´・ω・`)「実は僕、月人なんだ」

彡(゚)(゚);「?!」

63: 名無しさん 22/03/06 19:06:12 ID:XpnX
彡(゚)(゚);「つ、つき……?」

(´・ω・`)「月の裏側には高度な文明があるって聞いたことない?僕はその月で生まれ育った月人なんだ」

彡(゚)(゚);「ちょっと待ってくれ。お前が月の人やと?!月の文明なんてNASAの陰謀論でしか聞いたことあらへんで!本当に……本当に月には人が住んでいたんか?!」

(´・ω・`)「そうだよ。人類のほとんどはそれに気付くことすらできない。でも確かにあるんだ、文明が」

(´・ω・`)「僕らの月の文明は地球を遥かに凌駕する。月人はみんな強く、頭脳も優れている。人類とは比べものにならないほどね。だから殆ど眠らなくても活動できるんだ。寿命も1億年はあるよ」

彡(゚)(゚);「1億?!」

64: 名無しさん 22/03/06 19:07:17 ID:XpnX
(´・ω・`)「まさかって顔だね。そりゃそうだよね。いきなりこんなこと言って信じる人はいないよ」

彡(゚)(゚);「た、確かに頭の理解が追い付かんが……お前らが不眠不休で耐えられた理由は分かったわ。他に考えられん。お前ら、人類じゃないからできたのか」

彡(゚)(゚);「じゃあ、おんちゃんも同じ月からやってきた人やったんか?」

(´・ω・`)「うん。月人だよ。実は地下生活が始まる前も連絡を取り合っていたんだ」

彡(゚)(゚);「お前ら何のために地球にいるんや。もしかして地球を侵略する為じゃ……」

(´・ω・`)「ハハハ。違うよ。そんな必要ないからね」

65: 名無しさん 22/03/06 19:08:42 ID:XpnX
彡(゚)(゚);「じゃあどうしてや?こんな絶望的環境じゃ月で暮らした方がええんちゃうか」

(´・ω・`)「その通り。わざわざ地球に住もうとする月人はいない。実際に僕ら月人は地球を見下しているんだ。野蛮で原始的な遅れた星だ、ってね……」

(´・ω・`)「お兄ちゃん、僕らは地球を人が住める星だと思っていない。はっきり言うよ。僕らにとって、地球とは『流刑地』なんだ。罪を犯した月人が送り込まれる『監獄』なんだよ」

彡(゚)(゚)「えっ?!もしかして原住民やおんちゃんは……」

(´・ω・`)「そう。僕らは月から追放された者だ」

66: 名無しさん 22/03/06 19:09:02 ID:XpnX
(´・ω・`)「僕が生まれたのは月を治める指導者の一族だった。しかし一族は政権争いに敗れ、主だった人々が処刑されたんだ。僕らは死こそ免れたけれど、地球への永久追放という重い処分を受けた。100万年くらい前かな。他にも何人かいたよ」

彡(゚)(゚);「ひゃ、ひゃくまん……?」

(´・ω・`)「文明も何もない野生の星へ置き去りにされた僕らは、まさに『落ちる所まで落ちた』って感じだったね。文明に囲まれた優雅な暮らしから一転、雨水をすすりほら穴で眠ったのだから」

(´・ω・`)「月には戻れないし、地球には何もない。疫病や災害によって命を落とす仲間もいた。死ぬことは毎日考えた。それでも僕らは必死に生き延びたよ」

67: 名無しさん 22/03/06 19:09:20 ID:XpnX
(´・ω・`)「お兄ちゃん。僕らはずっと人類を見守り、陰で支えてきたんだ」

彡(゚)(゚)「もしかして、人類の祖先が火や道具を使ったのは……」

(´・ω・`)「そう。僕らが教えたからだよ。僕らが人類の進化を促してきたんだ」

彡(゚)(゚);「し、知らなかった。ワイらの進化はお前らのおかげやったんか。原住民は100万年も昔からワイらのそばにいたのか!」

(´・ω・`)「都合のいい言い方だけど、僕にとって人類は友であり家族だった。心の支えだった。いつも大切に思っていたよ」

(´・ω・`)「でもね……」

68: 名無しさん 22/03/06 19:09:41 ID:XpnX
(´・ω・`)「あの核戦争が起きた時、僕はとてもがっかりしたよ。僕らが育ててきた人類が自ら死ぬことを選んだのだから。本当に絶望した」

彡(゚)(゚)「そうか……すまんな。本当にすまんな……。同じ人類として情けない。恩を仇で返してしまい本当にすまん……」

(´・ω・`)「それでも前に進むしかないんだ。1億年生きれば1000年無駄にすることもある。しょうがないよ」

彡(゚)(゚)「原住民……」

(´・ω・`)「それに、お兄ちゃんを見たらそんなことはどうでも良いと思ったんだ。僕らは同じなんだ、助けなきゃって」

(´・ω・`)「どうしようもない力のせいで全てを奪われ、どん底に落とされるつらさは僕もよく分かる。だから助けたんだ」

彡(;)(;)「原住民……ありがとう。本当にすまんかった……」

69: 名無しさん 22/03/06 20:02:10 ID:XpnX
~現在に戻る

彡(゚)(゚)「あれからもう20年か。長かったような、あっという間のような」

(´・ω・`)「ずっと頑張ったね。生き残るために必死に働いた。お陰で、見てよ。地球の気温は再び下がり、外に出られるようになった」

彡(゚)(゚)「『全てが失われてもまだ未来は残っている』。クリスチャン・ネステル・ボビーの言葉や」

彡(゚)(゚)「ワイらは再び地上の生活に戻れたんや。元の生活には程遠いけど、少しずつ前に進み始めた」

(´・ω・`)「頑張ったお陰で大好きなきうりも沢山採れるようになった。(ポリポリ)うん、おいしい!」

彡(゚)(゚)「美味いなぁ。何気ないことでも幸せに思えるわ……(ポリポリ)」

(´・ω・`)「さ、午後も頑張って働こう」

彡(^)(^)「おう、頑張ろうな!」

72: 名無しさん 22/03/07 16:09:43 ID:YIBc
いいね

73: 名無しさん 22/03/08 14:45:03 ID:VLsD
ええやん

74: 名無しさん 22/03/08 15:05:11 ID:0Xm9
面白かった