社長「そこの…遠くにいる人達は─」

社長「その場所から朝礼に参加するつもりか？」

彡(ﾟ)(ﾟ;「（…ん？これ社長の視線的にワイ等のことを指してるんか？）」

社長「そんな部屋の隅のほうにいたら聴こえ辛いでしょ」

社長「それに我々も無駄に声を出さないといけなくなる」

社長「…これくらい、言われないと分からんか」

彡()()「」

彡()()「（確かに…あの一瞬のうちにワイ等の近くにいた社員の人々は部屋の中央に移動しとる…）」

彡(ﾟ)(ﾟ;「（急いで移動せな…！）」

同期Ａ「申し訳御座いません！」

同期Ｂ「失礼しました！」

彡(ﾟ)(ﾟ;「し、失礼しました！」

専務「…えー、本日の朝礼はは本年度の新入社員にとって初めての朝礼となります！」

専務「部署ごとの報告、または全体への連絡事項の後に」

専務「1人1人、簡単に自己紹介をして貰います」

彡(-)(-)「（幸い、さっきの移動でワイの立つ位置は新入社員の集まりの中で真ん中寄りになった）」」

彡(^)(^)「（これで他人の自己紹介を参考にできるのは大きい。勝ちゲーやな！）」

専務「……今日の係の者はいるか？」

社員Ａ「はい！！」

専務「宜しい。それでは先ず─」

専務「社訓唱和！！！」

社員Ａ「一つ！常に迅速に！かつ的確な行動を心掛けよ！！！」

全員「「「一つ！！常に迅速に！！かつ的確な行動を心掛けよ！！！！」」」

社員Ａ「一つ！1日を24時間ではなく48時間と認識せよ！！！」

全員「「「一つ！1日を24時間ではなく48時間と認識せよ！！！」」」

彡(^)(^)「（…おっ？）」

ﾎﾜﾝﾎﾜﾝｶｺﾍﾝー

【過去回想】

(●▲●)『なぁヤバい会社のサインって何だと思う？』

（´・ω・｀）『どうしたの突然』

彡(ﾟ)(ﾟ)『そんなもんネットで調べたら一発やろ』

(●▲●)『いや～ネットも言うほど万能じゃないぜ？それこそ業界最大手の企業がやらかしたらニュースにもなるだろうけどさ』

(●▲●)『名も知れぬ中小企業が労働基準法違反したところで中々明るみに出ないもんだ』

(●▲●)『それこそ元従業員の告発でもない限りはな』

（´・ω・｀）『ネット上の匿名型の投稿だと、企業の悪行は赤裸々に書かれても』

（´・ω・｀）『肝心の企業名は伏せてある場合が多いよね。みんなそこが知りたいのに』

彡(ﾟ)(ﾟ)『全部は無理でも、せめて頭文字や業界名くらい明らかにして欲しいもんやな』

(●▲●；）『正気かお前。中途半端な情報開示こそ厄介なものはないんだぞ』

(●▲●；）『同名の企業だって昨今珍しくはない…』

(●▲●）『例えば、例えばの話だぞ？頭文字が【ポ】でスポーツ関連の事業展開をしている会社が悪いことをしてますって投稿があったとして』

彡(ﾟ)(ﾟ)『(*^○^*)』

（´・ω・｀）『(*^○^*)』

(●▲●）『俺は偉大なる先輩になんて事を…』

(●▲●）『とにかく『頭文字だけ～』といった情報の出し惜しみは同業他社などに迷惑が掛かる可能性が高い』

(●▲●）『だからイッチの言うような、部分的な開示はそれこそ滅多に存在しないだろうよ』

（´・ω・｀）『個人が会社を実名で告発するリスクも高いし、そもそもみんな辞めた（辞める予定の）会社にそこまで労力を割きたくないのかもね』

彡(ﾟ)(ﾟ)『精々愚痴って鬱憤を晴らすか、やっぱり自分は正しかったと自信を持ち直すのが主目的やろな』

(●▲●）『だからこそ自分達でも多少は指標を立てておかないと、いざって時に危険だって話』

(●▲●）『最近は会員制の投稿型サイトも複数あるが、それでも充分にカバーしきれていないのが現状だ』

（´・ω・｀）『あの手のサイトでも対象となる企業の平均点を上げようと、既存のものとは正反対の内容の不自然な投稿が散見されてたりするよね』

彡(ﾟ)(ﾟ)『そういえばトイレが汚い会社はヤバいっていう説を見たで』

(●▲●）『会社側が借りてる建物の老朽化が進んでいると』

(●▲●）『そもそも和式しか備え付けがなかったりするから一概には言えないけどな。近所の役所のトイレとかそれだ』

（´・ω・｀）『ただ自社ビル持ちの優良企業でトイレが汚い会社ってのもまず見ないかも』

（´・ω・｀）『あと全員で何かを暗唱する行為とかはブラックの代名詞じゃない？』

(●▲●）『あれはあれで、一つの事故が命取りになり兼ねない工場や工事現場とかだと』

(●▲●）『注意事項を改めて指差し再確認することで、個々の注意力が散漫になるのを未然に防いだりできるので』

(●▲●）『行為の意味自体はちゃんとあるんだぜ？』

彡(ﾟ)(ﾟ)『じゃあ仕事とは直接関係のない精神論や社長のポエムを読み上げるパターンはやばいっちゅうことか？』

(●▲●）『それはあるかもしれないな。会社の設立記念日とかならまだしも、毎日やる必要性がない』

（´・ω・｀）『そもそも仕事上のタブーを再確認するのと』

（´・ω・｀）『【２４時間立っていられますか】みたいな一度見たらお腹いっぱいになる文章の音読を」

（´・ω・｀）『比較すること自体おかしいと思うよ』

（´＾ω＾｀）『まぁ僕が受ける企業とは何ら関係のない事象だから、正直どうでもいいけどね』

彡(ﾟ)(ﾟ)『（こいつ話の流れを根本から断ち切りおったで…）』

【過去回想　終わり】

彡(^)(^)「（………）」

彡(-)(-)「………」

彡(-)(-)「（しかもさっき専務は『今日の係』と言っていた…）」

彡(ﾟ)(ﾟ)「（つまりこの社訓唱和は毎日あると考えていい…）」

彡(ﾟ)(ﾟ)「（更に言うなら…）」

彡()()「（これ、当番の人間が区切りの良いところまで１人で暗唱してから唱和する形式やんけ！）」

彡()()「（将来的にはワイも社訓を全文覚えなアカンっちゅうことか！？）」

彡(ﾟ)(ﾟ;「（現時点で５項目は超えとる…全部頭に入るやろか…）」

専務「──今の人間で新入社員の挨拶は最後かな」

専務「君達には引き続きオリエンテーションがあるから、そのつもりで」

専務「それでは本日の朝礼を終了する！本日も宜しくお願いします！」

全員「「「宜しくお願いします！！！」」」

彡(ﾟ)(-)「（朝っぱらから喉が枯れ枯れやで……この調子で大丈夫なんかワイ……）」

社員Ａ「それではこれから新入社員に向けたオリエンテーションを開始します」

社員Ａ「申し送れました。私の名前は社員Ａ。懇親会の時に顔を合わせた人が殆どだと思うけど、念のため」

彡(ﾟ)(ﾟ)「（懇親会はやっぱり大半の人間が出とったんか…）」

社員Ａ「まずは皆さん、改めて当社への入社、誠におめでとうございます」

社員Ａ「この時間は私の口から当社について、それと今後の予定について簡単に皆さんにご説明できればと思います」

社員Ａ「まず最初に当社についてですが～…」

彡(-)(-)「（面接対策で公式ホームページも就活サイトの掲載文も穴があくほど見たっちゅうねん…）」

彡(-)(-)「（面接での質疑応答で不明な点も一通り訊ねた後や…今更なにを言われても新鮮味が…）」

社員Ａ「──次に、福利厚生についてですが～」

社員Ａ「…まぁこの項目は時間もないので簡単に済ませます。とりあえず要点だけ」

彡(-)(ﾟ)「（就活中にも思ったが…なんで企業側は福利厚生の話になると口を噤むんや？）」

彡(ﾟ)(ﾟ)「（そら時間がないのはしゃーないけども…大半の企業が待遇面や福利厚生の話を飛ばしてたで）」

彡(ﾟ)(ﾟ)「（雇われる側の事は家族構成や親の職業、酷い時には片親になった人間にその理由まで根掘り葉掘り訊ねて来るくせに」

彡(ﾟ)(ﾟ)「（雇う側が労働者への報酬や保障を明らかにせえへんのは不公平ちゃうんか…？）」

彡(-)(-)「（まぁ募集要項に書いてある内容以上のことは無く、それを改めて口で説明するのも無駄っちゅうことやろな…）」

彡(-)(-)「（なによりこの不景気や…労働者の立場が低いのは当然。我慢や我慢…仕事にありつけただけ有難く思わな…）」

社員Ａ「──募集要項にはうちの会社の年間休日が…えーと…120日くらい？と書いてあったかと思いますが」

社員Ａ［実際に皆さんが休めるのは年間でいうと80日もないと思います」

彡(ﾟ)(ﾟ)「ファッ！？」

社員Ａ「朝礼の時間で読み上げた言葉の中にもあったかと思いますが…」

彡(ﾟ)(ﾟ)「（えっなにそれは）」

社員Ａ「この日本社会において『休む』という行為は悪そのものです」

社員Ａ「仕事は無限に存在します。例え目の前の仕事が終わったとしても、隣の人、果ては同じ部署の方の仕事はどうでしょう？」

社員Ａ「仮にある人が１日休んでしまった場合、その休んだ人の仕事は出勤している他の人に降りかかります」

彡(ﾟ)(ﾟ)「（必中攻撃かなにか？）」

社員Ａ「休むという事は他人に迷惑を掛けることに等しい」

社員Ａ「自分さえ良ければそれでいい、そのような自己中心的な考えは当社の社員に相応しい思想ではありません」

社員Ａ「その事を十分に理解したうえで『休みたい人は休んで』下さい」

彡(ﾟ)(ﾟ)「…」

同期Ｃ「す、すいません一つ宜しいでしょうか？」

社員Ａ「はい何か？」

同期Ｃ「ただいま説明にあった年間休日について質問があります」

同期Ｃ「私は就職活動の際、某社が運営する就職支援サイトからエントリーを行わせて頂いたのですが…」

同期Ｃ「そちらの募集要項には『完全週休２日制』と記載があったかと思うのですが…」

社員Ａ「あ～…それは間違いですね」

社員Ａ「弊社は『週休２日制』です。担当者のミスですね、後で確認しておきます」

彡(ﾟ)(ﾟ)「（雇用条件に対する認識の違いをミスの一言で済ますんか…）」

彡(-)(-)「（まぁワイらも…）」

就活生『サークルリーダー（※ただしサークルメンバーは自分１人とする）を２年間担当しました！』

就活生『ボランティア（※ただしボランティアを実際にやったとは言っていない）で現地に赴き、様々な活動を行いました！』

彡(-)(-)「（…みたいに企業側に対して嘘を吐くのが当たり前になってて）」

彡(-)(-)「（採用面接が化かし合いになっている手前、一方的に企業側だけを責めることも出来ない…か）」

彡(ﾟ)(ﾟ)「（しかしワイはちゃう…そんな0を1に言い換えたり、1を10に誇張するような嘘は…」

彡(○)(○)「──！」

……

…

役員Ａ『時にイッチ君は残業について、どう考えているかね？』

彡(ﾟ)(ﾟ)『業務時間内では実行が困難な自己への研鑽、または翌日以降の業務に向けた下準備など』

彡(ﾟ)(ﾟ)『【各個人ごとに与えられている課題】に挑む有意義な時間帯であると考えております』

彡(○)(○)「（あぁ……あぁぁ……）」

彡(-)(-)「（──嘘こけや自分…。残業なんか無いほうがええに決まっとるやろ…）」

彡(-)(-)「（生真面目な大学生活を送る代わりに、ええ企業に入社して悠々自適な生活を送るんやって…）」

彡(-)(-)「（大学生の４年間よりも社会人の何十年間を選ぶんやって……）」

彡(-)(-)「（代返を頼んでくる連中を、そうやって内心鼻で笑ってたんやろが…）」

彡(ﾟ)(ﾟ)「（──嘘吐きのワイには嘘吐きの企業か……世の中悪いことはできんな）」

同期Ｃ「…分かりました、ありがとうございます」

同期Ｄ「すいません、私も宜しいでしょうか」

社員Ａ「はい、どうぞ」

同期Ｄ［ただいまのお話、大変参考になりました。有難う御座います」

同期Ｄ「そのうえで質問なのですが…仮に止むに止まれぬ事情で勤務日に会社を休んでしまった場合は…どうすれば宜しいのでしょうか」

社員Ａ「欠勤した場合、ということですね」

社員Ａ「その場合は皆さんに支払われる給料から欠勤した日数分の金額を差し引かせて頂きます」

社員Ａ「これも後で説明させて頂きますが…欠勤した場合、差し引き額とは別に罰金の支払い義務が生じます」

社員Ａ「休んだことで会社全体に不利益…もとい損害を与えているわけですからね」

彡(ﾟ)(ﾟ;「（仮に１日分の差し引き額が１万として、２日休んだ場合【１万円x２日分＋欠勤に対する罰金x２日分】…が給料から引かれるっちゅうことか！？）」

社員Ａ「そのほか毎月皆さんからの給与からは会社のパソコンや筆記用具などの備品を使用した金額、これは大体１万円前後…」

社員Ａ「加えて数年に一度を予定している社員旅行費への積み立てや福利厚生の維持費用など何点かを」

社員Ａ「『会社運営へのご協力』という形で差し引かせて頂いております」

彡(ﾟ)(ﾟ;「（パソコンのレンタル費用…？１人あたりが支払う電気代にしても割高やないか…？）」

社員Ａ「後になって『聞いていた金額と違う！』と騒がれるケースもありましたので、この時点で明確化しておきます」

彡(-)(-)「（そんなケースがあったんか……あるやろな）」

雲行きが怪しくなってきたところで今日はここまでや